2026年6月24日 AI活用

建設業・製造業の人手不足をAIで解決する方法

建設業・製造業は、他業種に比べても人手不足の深刻さが際立つ業界です。新たな人材を採用することが難しい状況だからこそ、今いる人材の業務負荷をどう減らすかが重要になります。本記事では、AIが人手不足対策にどこまで貢献できるか、業界特有の事情を踏まえて解説します。

人手不足の中身を分解する

「人手不足」とひとくくりにされがちですが、内容は大きく2つに分けられます。ひとつは、現場作業そのものを担う人材が足りないという問題、もうひとつは、書類作成や記録管理といった事務的な業務に時間を取られ、本来の業務に集中できないという問題です。

「人手不足」は2種類に分けて考える 建設業・製造業の人手不足課題を分解する 現場作業の人材不足 担い手そのものが足りない 施工・加工・組立など、現場で体を動かす 作業を担う人材が不足している状態 AIでは直接解決しにくい領域 (ロボティクスなど別領域の対応が必要) 例:建設現場の施工人員、工場の製造・ 組立ラインの作業者不足 事務的業務の負荷 書類・記録作成に時間を奪われる 書類作成や記録管理など、現場作業に付随 する事務的業務が負荷になっている状態 AIが効果を発揮しやすい領域 例:施工報告書・作業日報の作成、属人化 したノウハウのマニュアル化、品質記録の デジタル化

AIが直接的に効果を発揮しやすいのは後者です。現場の物理的な作業をAIが代替することは現時点では限定的ですが、書類業務や記録作成にかかる時間を減らすことで、現場の担当者が本来の作業に充てられる時間を増やせます。

建設業・製造業でこの問題が特に深刻なのは、現場の高齢化が進んでいることに加え、若手の採用自体が難しくなっているためです。新規採用で人手を増やすという解決策が取りづらい以上、今いる人材の時間をどう確保するかという発想に切り替える必要があります。

建設業で活用しやすい場面

建設業は、許認可申請の書類、安全管理の記録、施工管理の日報など、書類業務の量が非常に多い業界です。これらの作成・整理にAIを活用すれば、現場監督や担当者が事務作業に取られる時間を減らせます。

たとえば、現場での確認事項を音声でメモし、それをAIで議事録・日報の形式に整形するという使い方は、議事録・資料作成業務をAIで効率化する具体的な方法で紹介した方法がそのまま応用できます。また、高所や危険区域の巡回・進捗確認に、ドローンで撮影した画像をAIで解析し、異常箇所を検出する取り組みも広がっています。危険な場所への立ち入り回数も減らせるため、人手不足対策と安全対策の両方に効果があります。

具体的には、現場監督が日報作成に1日あたり30分かけていたとして、AIによる整形でその時間が10分に短縮できれば、1日20分の削減です。現場監督20人・月20日稼働で計算すると、月間約130時間の削減になります。この時間を、本来の施工管理や安全確認に充てられると考えると、効果の大きさが見えてきます。なお、この数字は説明のための一例であり、実際の効果は業務内容や体制によって変わります。

製造業で活用しやすい場面

製造業では、ベテラン社員に蓄積された技術・判断のノウハウが、特定の個人に依存している「属人化」が大きな課題です。人手不足で新しい人材の採用・育成が難しい中、ベテランが退職すると、その技術がそのまま失われてしまうリスクがあります。

この課題に対しては、ベテランの作業内容や判断基準を聞き取り、AIを使って手順書やマニュアルの形に整理するという活用法があります。聞き取った内容をそのまま文章化するだけでなく、判断基準を質問形式で深掘りして引き出すこともAIの得意分野です。

また、品質管理の記録をデジタル化し、異常の傾向をAIで検知することで、検査業務の負荷を減らす取り組みも進んでいます。これまで紙の記録簿に手書きで残していた検査結果をデータ化しておけば、異常の傾向を振り返って確認する作業も、AIに任せやすくなります。FAXや紙ベースのやり取りが多く残っている業務ほど、最初のデータ化に手間がかかりますが、一度デジタル化できれば、その後のAI活用の幅が大きく広がります。

AIで解決できないこと

AIは万能ではありません。現場での物理的な作業そのものを代替する技術は、ロボティクスなど別の領域であり、生成AIの活用範囲とは異なります。また、最終的な安全確認や、人と人との信頼関係が関わる判断は、AIに任せきりにはできません。

人手不足対策としてAIを検討する際は、「業務のどの部分が事務的な負荷で、どの部分が現場作業そのものか」を切り分けることが重要です。この切り分けを誤ると、期待した効果が得られず、「AIを導入したのに人手不足は変わらなかった」という結果になりかねません。

なお、現場作業の省人化そのものを目指す場合は、ロボティクスやIoTセンサーといった別の技術領域との組み合わせが必要になります。生成AIは、それらの技術が収集したデータを解析・要約する役割を担うことはできますが、物理的な作業を代替する技術ではない、という違いを理解しておくと、導入後の期待値のズレを避けられます。

導入の進め方

人手不足対策としてAIを導入する場合も、進め方の基本は他の業務効率化と同じです。中小企業のAI導入の進め方で解説している通り、まずは対象業務を整理し、頻度が高く負荷の大きい書類業務から小さく試すことをお勧めします。

効果は、AI導入の費用とROIの考え方で紹介した計算方法と同様に、削減できた時間を担当者の時給で換算すれば、投資判断の目安になります。書類業務は頻度が高いため、比較的短期間で効果を実感しやすい領域です。

効果を出すための注意点

属人化したノウハウをAIで活用する場合、最初のハードルはノウハウの聞き取りと文書化です。ベテラン社員自身が「自分の判断基準を言葉で説明するのが難しい」と感じることも多く、この作業には相応の時間がかかります。

聞き取りを一度で終わらせようとせず、複数回に分けて少しずつ引き出していくほうが、結果的に質の高いマニュアルができあがります。ノウハウの引き出しを省略してAIだけに任せようとすると、精度の低いマニュアルしかできず、現場で使われないまま終わってしまいます。

できあがったマニュアルも、作成した時点で完成とせず、実際に若手社員に使ってもらいながら、分かりにくい部分を継続的に修正していく前提を持っておくとよいでしょう。ベテラン本人にとっては当たり前すぎて言葉にしていない手順が、マニュアルには抜けていることがよくあります。

よくある質問

人手不足対策としてAIを導入する場合、何から始めるべきですか?

書類作成や記録管理など、事務的な業務の中で頻度が高いものから始めることをお勧めします。現場作業そのものの代替を期待すると、得られる効果と期待値にズレが生じやすくなります。

ベテラン社員の技術をAIでマニュアル化する場合、どれくらい時間がかかりますか?

ノウハウの複雑さによって異なりますが、聞き取りを複数回に分けて行う必要があるため、数週間から数か月程度かかることが一般的です。一度で完成させようとせず、段階的に整理していく前提で計画してください。

ロボットやIoTを導入すれば、AI活用は不要になりますか?

不要にはなりません。ロボットやIoTセンサーが現場で収集したデータを、分かりやすく要約・整理する場面では、生成AIが役立ちます。両者は競合する技術ではなく、組み合わせることで効果が高まる関係にあります。

まとめ

建設業・製造業の人手不足対策では、AIが効果を発揮しやすい「事務的な負荷」と、AIでは代替できない「現場作業そのもの」を切り分けることが重要です。書類業務の効率化や、属人化したノウハウのマニュアル化から始めれば、人手不足の負担を着実に減らしていけます。自社のどの業務からAI活用を始めるべきか判断に迷う場合は、Seldishの「AI導入・活用支援」にご相談ください。

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