議事録の作成や会議資料の整理は、頻度が高く時間がかかる割に、後回しにされがちな業務です。生成AIを使えば、この種の定型業務をかなりの部分自動化できますが、「何から手をつければいいか分からない」という声もよく聞きます。本記事では、議事録・資料作成の各工程に、どのようにAIを組み込めるかを具体的に解説します。
議事録作成の工程をAIで分解する
議事録作成は、ひとつの作業ではなく「録音・文字起こし」「要点の整理」「フォーマットへの整形」という複数の工程の組み合わせです。それぞれの工程によって、向いているAIの使い方が異なります。
文字起こしの工程では、音声を自動でテキスト化する専用のAIツールが向いています。専用ツールは話者の区別や、会議特有の言い回しの認識精度を重視して作られていることが多く、汎用の生成AIチャットに音声をそのまま読み込ませるよりも安定した結果が得られやすい傾向があります。
要点の整理とフォーマットへの整形は、ChatGPT・Claude・Geminiのような汎用の生成AIチャットの得意分野です。どのツールが向いているかは、ChatGPT・Claude・Gemini比較で解説した使い分けの考え方がそのまま当てはまります。文字起こしされたテキストを渡し、「決定事項」「次のアクション」「担当者」といった項目で整理するよう指示すれば、読みやすい議事録の形に変換できます。
専用ツールと汎用AIチャットをどう組み合わせるか
文字起こしから議事録の完成まで、ひとつのツールで全工程をカバーしようとすると、精度に妥協が必要になる場面があります。実務的には、文字起こしは専用ツールに任せ、その出力を汎用の生成AIチャットに渡して整形する、という2段階の組み合わせが扱いやすい方法です。
この方法であれば、文字起こしの精度はツールに任せ、整形のフォーマット(型)だけ自社の議事録の形式に合わせて調整すればよいということです。整形時の指示文(プロンプト)をテンプレート化しておけば、毎回同じ手順で安定した議事録を作成できるようになります。
たとえば、「以下の文字起こしテキストから、①決定事項、②次のアクションと担当者、③保留事項の3項目に分けて、箇条書きで整理してください」といった指示をテンプレートとして用意しておきます。会議ごとに文字起こしテキストを貼り替えるだけで、毎回同じ形式の議事録が出力されるようになり、担当者によって仕上がりがばらつく問題も防げます。
資料作成への応用
同じ仕組みは、議事録以外の資料作成にも応用できます。会議で出たメモやアイデアを箇条書きでAIに渡し、「提案書のたたき台を作成して」と指示すれば、ゼロから書き始めるよりも早く骨子を作れます。
ただし、AIが作成した骨子はそのまま提出せず、事実確認と表現の調整を人の目で行うことが前提です。AIは構成や言い回しの土台を作るのが得意ですが、社内固有の事情や正確な数値までは把握していないため、最終チェックは欠かせません。
応用の幅を広げたい場合は、議事録の「次のアクション」項目をそのままタスク管理ツールへの入力フォーマットに変換する、といった使い方もできます。議事録作成で得られたテキストを別の業務の入力データとして再利用する発想を持っておくと、AIの活用範囲を少しずつ広げやすくなります。
効率化の効果をどう測るか
AI導入の費用とROIの考え方で紹介した計算方法は、議事録作成の効率化にもそのまま使えます。これまで議事録作成1件あたりにかかっていた時間を記録し、AI活用後の所要時間との差に担当者の時給を掛ければ、削減効果を金額で把握できます。
会議の頻度が高い部署ほど、この効果は大きくなります。週に複数回会議がある部署から導入を始めると、効果を実感しやすく、社内への展開もスムーズになります。
効果を測る際は、議事録作成という1業務に絞って計測することをお勧めします。資料作成への応用など複数の業務をまとめて「楽になった」と捉えると、どの工程がどれだけ効いたのかが分からなくなり、次にどこへ展開すべきかの判断材料が得られません。
社内に定着させるための進め方
ツールを導入しただけでは、現場に定着しないことがよくあります。定着のポイントは、最初から全社展開を目指さず、ひとつの部署・ひとつの業務に絞って試すことです。
効果を感じたメンバーが使い方を周囲に共有すれば、無理に広めなくても自然に利用が広がります。逆に、最初から全社一斉導入を進めると、使い方に慣れていない社員からの問い合わせ対応に時間を取られ、定着が遅れる原因になります。社内研修や定着支援の進め方については、社内にAI活用を定着させる研修・教育の進め方で詳しく取り上げています。
導入時に気をつけたいこと
会議の内容には、人事に関する話や、取引先の機密情報が含まれる場合があります。文字起こしツールや生成AIチャットに音声・テキストを入力する際は、そのツールが入力データをどのように扱うか(学習に利用するか、保存期間はどれくらいか)を確認しておく必要があります。
特に、無料版や個人向けプランの利用規約は、法人向けプランと異なる場合があります。社外秘の内容を含む会議では、データの取り扱いが明確な法人向けプランを使う、あるいは機密性が特に高い場合は従来通り人の手でメモを取るといった判断が必要です。
また、AIによる文字起こしや要約には誤認識が含まれることがあります。特に固有名詞や数値は誤りやすいため、決定事項や数値が関わる部分は、必ず人の目で確認してから配布するようにしてください。
よくある質問
専用の文字起こしツールと汎用AIチャット、どちらから導入すべきですか?
会議の頻度が高く、文字起こしの精度を重視したい場合は専用ツールから、まずは整理・要約のところだけ試したい場合は普段使っている生成AIチャットから始めるとよいでしょう。両方を組み合わせる場合も、最初はどちらか一方の工程から試して、慣れてから範囲を広げる進め方がお勧めです。
機密性の高い会議では、AIを使わない方がよいですか?
内容によります。データの取り扱いが明確な法人向けプランであれば利用できる場合もありますが、極めて機密性の高い会議では、AIを使わずに人の手で議事録を作成する判断もひとつの選択肢です。
議事録作成以外に、すぐ応用できる業務はありますか?
社内向けの報告書の骨子作成や、研修内容のまとめなど、メモや音声から文章を整理するという構造が同じ業務であれば、同じ仕組みをそのまま応用できます。まずは議事録作成で慣れた進め方を、似た業務に当てはめてみるとよいでしょう。
まとめ
議事録・資料作成は、工程を分解して考えると、AIを組み込みやすい部分が見えてきます。文字起こしは専用ツール、整理・整形は汎用の生成AIチャットという組み合わせから試してみると、無理なく効率化を進められます。どの業務から手をつけるか迷う場合は、中小企業のAI導入の進め方で解説している業務整理の考え方も参考にしてください。情報の取り扱いに不安がある場合や、自社に合った進め方を相談したい場合は、Seldishの「AI導入・活用支援」にお気軽にご相談ください。